実効再生産数 や 基本再生産数 という単語を耳にすることが多くなりました。報道などでも説明されるように、感染の広がりやすさの指標だということはなんとなく分かります。この記事では、もう少し詳しく、そしてどのように計算されているのかを知りたくて勉強したことをまとめています。
実効再生産数とは
実効再生産数(effective reproduction number: Rt)とは、 NIID 国立感染症研究所のIASR(病原微生物検出情報) によると次のように説明されています。
1人が他の人にどれだけ移すかを表した数値で、この数字が大きいか小さいかで感染が広がっているかどうかが分かるってことですね。
本来、この数値の算出には様々な要素を考慮する必要がありますが、同資料によると、新規陽性者数/(世代時間)日前の新規陽性者数 という計算によって近似できるようです。この世代時間っていうのは、ある患者が感染してから二次感染を起こすまでの時間のことで、ドイツなんかでは世代時間を4日と固定して計算した結果を使ってるみたいです。
基本再生産数
先ほどの定義では「一定の対策下での」という条件付きでした。隔離やワクチンなどの対策がない状態での感染させやすさのことを 基本再生産数(basic reproduction number: R0) と言います。
感染症数理モデル
感染症の流行は数理モデルによって表現されてきました。基礎となるのは、ケルマックとマッケンドリックの SIR モデルです。1927年に発表されたこのモデルでは、微分方程式によって感染流行を記述するモデルをはじめて定式化しました。その後も彼らの研究は続き、感染症数理モデルの基礎が築かれました。
そして、70年代末には数学的な見直しが進み、閾値定理が確立されます。1990年には Diekmann, Heesterbeek, Metz らによって、次世代作用素を使った基本再生産数の一般的定義がなされます。この辺りから感染症数理モデルの研究は飛躍的に進んだようです。
SIR モデル
最も基本的な数理モデルが SIR モデルです。このモデルでは、ある感染症について
- Susceptible – 感染症への免疫がない人数
- Infected – 感染していて感染させる能力がある人数
- Recovered – 感染症から回復して免疫がある、または死亡した人数
として、その推移を記述します。
SEIR モデル
SIR モデルでは、感染しても感染させる能力がない状態や、症状がない状態のことを考慮していません。これに対応するため4つめの状態として潜伏期間を考慮したのが SEIR モデルです。
- Susceptible – 感染症への免疫がない人数
- Exposed – 潜伏期間
- Infected – 感染していて感染させる能力がある人数
- Recovered – 感染症から回復して免疫がある、または死亡した人数
A Contribution to the Mathematical Theory of Epidemics.
Kermack, McKendrick
1927